- 日本の公認会計士試験・USCPA(米国公認会計士)試験に合格したが、Big4監査法人は結局どこがいいのか分からない
- 規模・働き方・仕事内容など、どんな基準で監査法人を選べばいいのか分からない
- 最新情報をもとに、Big4監査法人を比較したい
このようなお悩みに答えます。
USCPA全科目に合格しBig4監査法人に在籍している私が、日米会計士の多くが入所するBig4監査法人はどこがおすすめなのか?を調査しました。
多角的な視点でランキング比較しているブログやサイトが見当たらなかったので、「だったら自分でBig4監査法人ランキングを作成してしまおう!」ということでデータを集めてみました。
なお、いずれの法人も業務急拡大により人手不足の傾向が続いており、未経験でもしっかり準備をすれば転職が可能です。
またBig4(大手監査法人)とは、日本の大多数の上場企業監査を担当する監査法人で、以下4法人が該当します。
- 有限責任あずさ監査法人(以下、あずさ)
- 有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)
- EY 新日本有限責任監査法人(以下、EY新日本)
- PwC あらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)
今回の記事ではそんなBig4監査法人について、
- 売上高の大きい監査法人ランキング
- 従業員数が多い監査法人ランキング
- 地方事務所の数が多い監査法人ランキング
- クライアント数の多い監査法人ランキング
- 初任給の高い監査法人ランキング
- IPO監査の多い監査法人ランキング
以上6つのカテゴリでランキングを作成してみました。
参考として、元データは以下の各法人公表資料に基づいています。
- 有限責任あずさ監査法人:第38期(2022年6月期)業務及び財産状況説明書
- 有限責任監査法人トーマツ:第55期(2022年5月期)説明書類(2022.08.05)
- EY新日本有限責任監査法人:第23期 業務及び財産の状況に関する説明書類
- PwCあらた有限責任監査法人:第17期 業務及び財産の状況に関する説明書類
Big4監査法人への転職で悩んでいるCPA合格者は、ぜひ読み進めてみてください。
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①売上高の大きい監査法人ランキング
売上が大きい監査法人のランキングは以下のとおりです。
売上高の総額ランキング
順位 | 監査法人 | 2022年度 | 2021年度 | 増減金額 | 増減% |
1 | トーマツ | 138,814百万円 | 123,676百万円 | +15,138百万円 | +12.2% |
2 | あずさ | 111,098百万円 | 105,281百万円 | +5,817百万円 | +5.5% |
3 | EY新日本 | 106,431百万円 | 104,037百万円 | +2,394百万円 | +2.3% |
4 | PwCあらた | 56,458百万円 | 54,856百万円 | +1,602百万円 | +2.9% |
トップを走るのがトーマツ。本業の監査証明業務だけでなく、会計アドバイザリー業務の売上高も伸ばしていることから絶好調。ただ、トーマツ以外のBig4も売上を伸ばしているので、Big4監査法人はいずれも規模拡大傾向にあると言えます。
売上が大きいことのメリットとして、より規模の大きな上場企業の監査業務や会計アドバイザリー業務に従事するチャンスが増えることが挙げられます。またいずれのBig4も何かしら大規模な会社を監査しているので分業体制が整っており、あるべき監査業務のイロハが学べる文化が根付いています。
その反面、ビッグクライアントの主査(インチャージ)を経験するまでには時間がかかります。
さらに、売上を監査証明業務別・非監査証明業務別に分けるとそれぞれ以下のとおりです。
監査証明業務(監査報酬)別売上高ランキング
順位 | 監査法人 | 2022年度 | 2021年度 | 増減金額 | 増減% |
1 | EY新日本 | 89,666百万円 | 88,706百万円 | +960百万円 | +1.1% |
2 | トーマツ | 86,143百万円 | 83,223百万円 | +2,920百万円 | +3.5% |
3 | あずさ | 85,432百万円 | 83,296百万円 | +2,136百万円 | +2.5% |
4 | PwCあらた | 28,206百万円 | 28,013百万円 | +193百万円 | +0.7% |
ここでいう監査証明業務とは、CPA受験生ならばご存じの会計監査業務=各法人の財務諸表の経営成績・財務状態が適正かチェックする業務です。
特に強いのはEY新日本。以前からクライアント数が多いことで有名です。次点がトーマツ・あずさで拮抗しており、PwCあらたは他Big4と比較してかなり規模が小さいです。
会社法や金商法、各金融関連の法律に基づく法定監査のため、売上の市場規模としてはあまり広がる領域ではなく、Big4間でパイの奪い合いをしているイメージです。
近年の傾向としては、各Big4が監査証明業務を引き上げており、「こんな高い監査報酬は払えない!」といった上場企業が準大手監査法人へ流入しているようです。
Big4が監査報酬を吊り上げる理由としては、
- 欧米のヘッドクォーターからの要請でブランド維持のための多額のロイヤリティを支払わなければならない
- 海外Big4ではインフレ(物価上昇)による監査報酬増加が当たり前なのに、日本は「監査報酬=固定報酬」という考えのまま報酬交渉せざるをえない
といったことが背景にあると考えられます。
非監査証明業務(会計アドバイザリー業務)別売上高ランキング
順位 | 監査法人 | 2022年度 | 2021年度 | 増減金額 | 増減% |
1 | トーマツ | 52,670百万円 | 40,452百万円 | +12,218百万円 | +30.2% |
2 | PwC あらた | 28,252百万円 | 26,842百万円 | +1,410百万円 | +5.3% |
3 | あずさ | 25,665百万円 | 21,985百万円 | +3,680百万円 | +16.7% |
4 | EY 新日本 | 16,765百万円 | 15,331百万円 | +1,434百万円 | +9.4% |
一方の非監査証明業務とは、監査法人が行う会計アドバイザリー業務を示します。
トーマツの売上高は増加金額・増加率ともに圧倒的。なんと30%以上も売り上げを伸ばしています。
数年前に東京オリンピックのアドバイザリー業務を大量に受注したのが今も継続しているのかもしれません。実際、こちらのプレスリリースのように、継続的にIOCとパートナーシップ契約を締結しているようですので、アドバイザリーによるトーマツの売上は加速するかもしれません。
また、もうひとつ大きく伸ばしているのがPwCあらた。これまでのランキングと異なり、PwCあらたが4位→2位に浮上し、3位あずさ、4位EY新日本となっています。
PwCあらたが躍進を遂げている理由は、他のBig4が監査証明業務を提供しているクライアントに対して、非監査証明業務(アドバイザリーサービス)を展開できているからだと思われます。
たとえば、「自ら財務諸表を作製して、監査もする」といったような監査証明業務・非監査証明業務の同時提供は、独立性を担保できないので禁止されています。
さらに言えば、PwCあらたの売上高は2022年度に初めて非監査証明業務(28,252百万円)が監査証明業務(28,206百万円)を上回りました。PwCあらたは本気でコンサルティング会社を目指しているのかもしれませんね…。
ちなみに各Big4監査法人内のアドバイザリー部門の名称は以下のとおり。
- 有限責任監査法人トーマツ:リスクアドバイザリー事業本部
- PwC あらた有限責任監査法人:財務報告アドバイザリー部 ※2022年夏より事業会社部門・金融機関アドバイザリー部門が統合
- 有限責任あずさ監査法人:AAS事業部(アカウンティングアドバイザリーサービス)
- EY新日本有限責任監査法人:FAAS事業部・金融事業部
以下の各Big4のFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)は、ブランドは同じですがそもそも監査法人ではない点にご留意ください。
- デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
- PwCアドバイザリー合同会社
- KPMG FAS
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
FASとの大きな違いですが、監査法人のアドバイザリー部門は
- 財務諸表の作成
- 内部統制構築・評価支援
- M&Aの財務報告支援
- 財務デューデリジェンス
といった会計に特化したコンサルティングを展開しています。
実はこの監査法人のアドバイザリー部門、近年ではホワイト部門として監査法人内でもひっそりと話題になっています。
もし「監査法人のアドバイザリー部門への転職を相談してみたい」という方は、以下のアクシスコンサルティングのキャリアアドバイザーへ相談するのがおすすめです。
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②従業員数が多い監査法人ランキング
従業員数が多い監査法人ランキングは以下のとおりです。
順位 | 監査法人 | 社員数 | 使用人数 | 合計 | ||||
公認会計士 | 特定社員 | 公認会計士 | 公認会計士試験合格者等 | 監査補助職員 | その他の事務職員等 | |||
1 | トーマツ | 482 | 54 | 2,485 | 1,371 | 2,858 | 93 | 7,343 |
2 | あずさ | 557 | 37 | 2,403 | 1,331 | 1,259 | 730 | 6,317 |
3 | EY 新日本 | 514 | 8 | 2,388 | 1,274 | 849 | 533 | 5,566 |
4 | PwC あらた | 148 | 37 | 865 | 617 | 1,067 | 98 | 2,832 |
従業員の数が多いことのメリットとしては、大所帯なので知り合えるCPAが多くその後のネットワーク作りに役立つ可能性が高まります。
トーマツが合計人数トップ。次点であずさ、EY新日本、PwCあらたと続きます。
しかし注目すべきなのは、社員・従業員の合計人数ではなく会計士資格を持たないパートナー(特定社員)の数が増えている点ではないかと思われます。
特定社員が増加している理由としては、監査業務を進めるうえで、これまでの会計分野にとどまらずIT・金融工学・データ分析といった幅広い領域でのスペシャリストが求められているからと思われます。
この中には、USCPAのシングルホルダーでパートナーになっている方も含むと推察されます。つまり、JCPA(日本の公認会計士の有資格者)ではなくともパートナーになれる可能性が高まっているのです。
とはいえ、現行ルール上は大多数の社員はJCPAでなければならないため、日本の公認会計士資格を持っている方の監査法人内で出世するうえでの優位性は崩れないと思います。
実際EY新日本は社員(ここでいう社員はパートナーのこと)のうち1.5%しか特定社員がおらず(8名/522名)、JCPAの資格がないと出世は厳しいと思われます。一方PwCあらたは20%が特定社員(37名/185名)なので、JCPAにかぎらず幅広いスペシャリストを昇進させる文化ではないかと思われます。
ちなみに私が実際に働いて情報収集したUSCPAのBig4監査法人内でのキャリアについても、別記事でご紹介しています。
③地方事務所の数が多い監査法人ランキング
地方事務所の数が多い監査法人ランキングは以下のとおりです。
順位 | 監査法人名 | 事務所数 | 事務所名 |
1 | トーマツ | 17 | 東京・札幌・仙台・新潟・さいたま・横浜・長野・北陸・静岡・名古屋・大阪・京都・神戸・広島・高松・福岡・那覇 |
2 | EY 新日本 | 16 | 東京・札幌・仙台・福島・新潟・富山・金沢・松本・静岡・浜松・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄 |
3 | あずさ | 12 | 東京・札幌・仙台・北陸・北関東・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡 |
4 | PwC あらた | 4 | 東京・名古屋・大阪・福岡 |
トーマツ・EY新日本は全国に事務所を抱えており、あずさは大都市に絞っている印象。あらたはさらに4都市しかなく、東北・北海道エリアにもう1事務所あればいいのでは?と思ってしまうほど少ないです。
ちなみに、地方事務所に勤務すれば以下のメリットが得られます。
- 給与水準にもほとんど差はなく、生活費の安い地方に住める
- パートナーとの距離が近くコミュニケーションが取りやすい
- 部門を横断して幅広い業界に従事できる
特に、コロナ以降はリモートで地方事務所から東京事務所のヘルプに入ることも簡単になったので、働き方や従事できる仕事はかなり柔軟に選べるようになったのではと感じています。
④クライアント数の多い監査法人ランキング
監査証明業務のクライアント数の多い監査法人ランキングは以下のとおりです。
順位 | 監査法人 | 金商法&会社法監査 | 金商法監査 | 会社法監査 | その他の監査 | 合計 |
1 | EY 新日本 | 855 | 31 | 230 | 47 | 1,163 |
2 | トーマツ | 833 | 1 | 200 | 77 | 1,111 |
3 | あずさ | 704 | 14 | 222 | 72 | 1,012 |
4 | PwC あらた | 134 | 19 | 98 | 7 | 258 |
それぞれの監査の特徴は以下のとおり。
- 金商法&会社法監査:日本を代表する超大企業の監査
- 金商法監査:金融機関の監査
- 会社法監査:大企業の監査
- その他の監査:学校法人・独立行政法人・研究開発法人などの監査
EY新日本は、長年にわたり監査証明業務を行うクライアント数で首位となっています。金商法&会社法監査の同時提供クライアントだけでなく、金商法監査単独と会社法監査単独のクライアント数でもトップです。(主要クライアント:ENEOS・コカコーラ・キッコーマン・東急・日産・日立・みずほ・財閥系)
トーマツが強いのはその他の監査。内訳をみると、大学法人のクライアントが非常に多いので、パブリック部門の監査に強みがあると言えます。(主要クライアント:イオン・伊藤忠・ソフトバンク・サントリー・日清・財閥系)
あずさも安定してクライアント数は多く、その他の監査ではトーマツとほぼ同程度のクライアントを抱えています。独立行政法人・大学法人・地方独立行政法人のクライアントがバランスよく揃っています。(主要クライアント:アサヒ・NTT・電通・東京ガス・JR東・財閥系)
PwCあらたはBig4の中でのクライアント数は少ないものの、トヨタをはじめ日本有数のビッグクライアントを抱え、金融機関向けの監査にも強みがあると言えます。(主要クライアント:旭化成・シャープ・ソニー・東京海上・東芝・トヨタ)
⑤初任給の高い監査法人ランキング
初任給の高い監査法人は以下のとおりです。
- PwC あらた:月給405,740円 ※みなし時間外勤務手当 月30時間分(85,740円)含む、30時間を超えた時間外勤務については別途手当支給
- トーマツ:月額給与320,000円
- EY新日本:月給(首都圏)320,000円 月給(地区)317,000円
- あずさ:320,000円(首都圏手当10,000円含む)
PwCあらただけ、30時間分のみなし残業代を含んでいるため、8万円近く差をあけて月給約40万円とトップです。
他は32万円程度が相場ですが、他のBig4にしても繁忙期の残業時間はかなり増えるので、それに応じて給与の金額も跳ね上がります。
ちなみに、私のBig4の年収に関する記事でもご紹介していますが、1年目でも残業100時間近くまで働くと月収50万円はゆうに超えます。
初任給に関する情報は各Big4の以下募集要項より抜粋しています。
⑥IPO監査の多い監査法人ランキング
IPO(株式の新規公開)とは、成長中の企業を上場させ誰でも株取引ができるようにすることです。
そんなIPO準備を行う企業の監査も、監査法人の役割です。
IPO監査を経験することで、
- 企業の成長過程をみながら監査できる
- クライアントの経営陣との距離が近くコミュニケーションが取りやすい
- IPO監査経験は貴重なので監査法人を出た後も強力なスキルとして活かせる
といったメリットが得られます。
特に、IPO監査経験は貴重で、監査法人での経験を活かしてベンチャー企業のCFOポジションに転職し、IPOを成功させれば大幅なボーナスアップを狙うこともできます。
そんなIPO監査が多い監査法人の2022年上半期ランキングは以下のとおりです。
- トーマツ:9件
- EY新日本:7件
- あずさ:5件
- 太陽有限責任監査法人:4件
- PwC あらた:1件
PR TIMESより
IPOの件数のトップは9件のトーマツとなりました。
注目すべきが業界5番手の太陽有限責任監査法人で、積極的にIPO監査業務を受注しており、PwCあらたよりも多い4件を請け負っています。
このように近年、IPO監査業務を請け負う監査法人がBig4から中小監査法人へと流れている傾向があります。
以下の2021年のIPO監査件数も見てみるとより顕著です。
- EY新日本:33件
- トーマツ・あずさ:19件
- 太陽有限責任監査法人:17件
- PwC京都監査法人:8件
- 仰星監査法人:7件
- 東陽監査法人:6件
- PwC あらた:4件
公認会計士ナビより
2021年から2022年にかけて、明らかにBig4でのIPO監査件数のペースが落ちているのが分かります。
このような傾向を考慮すると「Big4にこだわらなくともいいのでIPO監査をやりたい」という方であれば、準大手監査法人・中小監査法人もねらい目です。
まとめ:未経験でも転職可能!自分が重視するポイントに沿って考えるのが大切
以上のランキングのトップをまとめると以下のとおりです。
- 売上高総額の大きい監査法人ランキング1位:トーマツ
- 監査証明業務(監査報酬)別売上高ランキング1位:EY新日本
- 非監査証明業務(会計アドバイザリー業務)別売上高ランキング1位:トーマツ
- 従業員数が多い監査法人ランキング1位:トーマツ
- 地方事務所の数が多い監査法人ランキング1位:トーマツ
- クライアント数の多い監査法人ランキング1位:EY新日本
- 初任給の高い監査法人ランキング1位:PwCあらた
- IPO監査の多い監査法人ランキング1位:トーマツ
冒頭でもお伝えのとおり、どのBig4監査法人も人手不足のため、日米会計士関係なくプロフェッショナル人材を求めています。
そのため、各ランキングや各Big4の特徴を踏まえて、「自分は働くうえで何を重視しているのか?」といった軸で選ぶのが良いです。
もし「Big4監査法人への転職を本格的に考えてみたい」という方は、以下のアクシスコンサルティングのキャリアアドバイザーへ相談するのがおすすめです。
私自身も登録して相談したのですが、押し売りもなく真剣に私のキャリアプランを考えていただけたのでかなり信頼できるエージェントだと感じました。
アクシスコンサルティング:Big4・コンサルへの5,000人以上の転職をサポート。77%が非公開求人&特別案件なので20~30代で年収1,000万円以上の大幅アップも。