USCPA(米国公認会計士)試験の中で、選択科目の1つであるBARは2~3科目めに学習することが多いのではないでしょうか。
今回の記事では、BARの試験がどんな内容かが分かるような内容を書きました。
読み進めていただくことで、
- 学習範囲
- 勉強法
- 勉強時間
- 問題傾向
- 時間配分
について理解を深め、USCPA試験の合格までの期間を短縮するのに役立つ情報をお届けできると考えています。
それでは早速まいりましょう!
BARの範囲:学習分野が浅く広い
具体的な学習範囲は
- 原価計算
- ファイナンス
- ビジネス論
- 経済学
- 政府会計
- 財務会計の一部論点
といった領域に分かれます。
BARの勉強時間:約250~450時間
私がかかった勉強時間は約250時間です。内訳としては、受験1回目で150時間、2回目で100時間程度です。
FAR1回目の不合格を知り、AUD1回目についても不合格通知を受けた最中でのBAR(当時はBECというBARに近い科目の受験でした)のチャレンジは、精神的に厳しいものがありました。
しかし、焦りからか、追い打ちをかけるように1回目の受験もスコア73で不合格となり、2回目の受験ではスコア79で合格となりました。
1回目・2回目の勉強内容をまとめると以下のとおりです。
1回目
・MC・TBSともに1.5周
・リリース問題:直近3年を1周
・サンプルテスト
2回目
・MC2周・TBS1.5周
・各論点のまとめ
・リリース問題:直近5年を2周
・サンプルテスト
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BARの勉強対策(初期)
BARの「学習分野が浅く広い」という点についてもう少し踏み込んでみます。
BARの具体的な学習範囲は先述のとおり、
- Business Analysis(ビジネス分析):40~50%
- Technical Accounting and Reporting(技術的な会計・報告):35~45%
- State and Local Governments(政府会計):10~20%
といった領域に分かれます。
BARの大きな特徴が、それぞれの領域が独立しており、関連性がない点です。
すなわち、各分野ごとに集中的に学習すれば合格レベルに近づけることができます。
BARの勉強対策(試験直前期):MC・TBSをバランスよく演習する
直前期の最大のポイントは、MC・TBSをバランスよく対策することだと思います。
具体的な対策としては、テキストを読みつつMC・TBSを2~3周回した段階で、早めにリリース問題に取り掛かるようにするのがいいです。
①論点を整理する
他の科目の記事でもご紹介していますが、論点のまとめはBARの学習でも大きな効果があります。
問題演習だけでは学習範囲を網羅するのには限界があり、論点を忘れることもあるので、自分の言葉でキーワード・重要論点整理する作業は非常に大切です。
とはいえ、ノートに何ページにもわたって論点を書き出す必要はありません。
私の場合は、テキストを丁寧に見直したうえで、テキストの裏表紙に自分の苦手ポイントや頻出ポイントを書き出すようにしました。
②模試を受験する
アビタスの場合であれば、申し込んだコースの中に各科目の模試もセットで含まれていると思います。
こちらもMC・TBSをある程度回した段階で、受験してみることをおすすめします。
また、合格者平均点に届いていない場合でも直前までスコアは伸びますので、数十点程度の点差でなければ、あまり結果は気にしなくてもいいと思います。
合格者平均に届かなかった模試の結果を気にするのではなく、模試でつまずいたポイントを書き出して復習するのが何より大切です。
③リリース問題・サンプルテストを解く
本番に極めて近いレベルで本試験をシミュレーションできるのが、リリース問題です。
リリース問題は、アビタスやTACで申し込んだ後にマイページ等で入手できる資料で、AICPAが各予備校に提供している本番レベルに極めて近い問題です。
リリース問題は本番の形式に慣れるのに非常に重要なので、是非フル活用してTestlet1~5までの流れをを把握しておくことをおすすめします。
BARの問題傾向:出題範囲が広く浅く暗記重視、管理会計やファイナンスは計算重視
BARの特徴は、暗記も計算も満遍なく出題される点です。
①ビジネス分析の例
例えば以下はMCのサンプルテストです。
ある部門の収益性を高めようとしているが、重要な機械の稼働能力が限られている。
この状況で、経営者にとって最も有用な意思決定手法はどれか?
①制約理論(ボトルネック・TOC)
②経済発注量(EOQ)
③バランスト・スコアカード(BSC)
④原価差異分析
正解は①です。
制約理論は、機械や人手が限られている状況において、「どのプロセスがボトルネック(障害)となって収益化が滞っているのか?」を把握・改善する理論です。
ちなみに合格ラインは、「稼働能力が…」といったキーワードを見た瞬間に、①を思い浮かべられるレベルになっていればOKと思われます。
そのためにも、テキストをみて、問題を解いて、間違えたらもう一度テキストを見て書き足して…という地道な作業はどうしても必要になります。
また計算以外にも、上記のような理論問題もバランスよく出題されるのがBARの特徴です。
「このキーワードが来たら、この選択肢を選べる」といった問題構成が多いという点で、AUDよりもFARやREGの理論問題に性質が似ている印象です。
合格レベルでは、ある程度の用語とその意味は暗記していることになるので、問題によっては選択肢をざっと読んでから問題を解く方が早いパターンもあります。
②公会計の例
一方の公会計は、範囲も良くわからない、学習したことがない方がほとんどだと思います。
イメージしづらいと思うので、こちらも日本語訳したサンプルテストをご紹介します。
政府機関は、以下のどの財務諸表においてキャッシュフロー計算書を含めることが要求されているか?
①政府系ファンドの財務諸表
②政府全体の財務諸表
③企業会計区分財務諸表
④受託者ファンドの財務諸表
こちらの正解は「③企業会計区分財務諸表」となります。
問題を解くときの思考プロセスは以下のようなイメージです。
政府の財務報告の中でも、企業会計区分で作成される財務諸表は、一般的な事業会社寄りの報告が求められていたはず。
↓
通常、規模の大きい事業会社においては、キャッシュフロー計算書の作成が要求されてて、性格の似ている企業会計区分の政府機関も考え方は同様だったはず。
↓
他の選択肢だと、「政府」の性格が強い(「会社」っぽくない)ので、予算を決めた後のキャッシュフローより、そもそも予算をどう分配するかに重点を置いていたような…。
↓
だから、今回の出題では③が正解だろう。
上記のような思考プロセスを試験前までに身に付けたうえで、解答を導くこととなります。
問題によっては、上記のような1行のシンプルな問題もあれば、10行以上にわたる問題もありますので、本番はペース配分に注意して進める必要があります。
このように、公会計はあまり計算問題が出ない一方、大まかな理解を前提とした「暗記」がモノを言う領域となっています。
なお、上記のサンプル問題は政府会計からの出題ですが、NPO会計も重要な学習範囲となっています。
BARの本試験の特徴
続けて、実際の本試験における特徴をご紹介します。
USCPA(米国公認会計士)の試験形式
USCPA試験は4科目から構成される試験で、各科目の概要は以下のとおりです。
科目 | 目安時間配分 | テストレット・問題数 |
FAR(コア科目) | No.1:40分 No.2:40分 No.3:45分 休憩:15分 No.4:70分 No.5:45分 |
No.1:MC25問 No.2:MC25問 No.3:TBS2問 No.4:TBS3問 No.5:TBS2問 |
AUD(コア科目) | No.1:55分 No.2:55分 No.3:40分 休憩:15分 No.4:50分 No.5:40分 |
No.1:MC39問 No.2:MC39問 No.3:TBS2問 No.4:TBS3問 No.5:TBS2問 |
REG(コア科目) | No.1:50分 No.2:50分 No.3:40分 休憩:15分 No.4:50分 No.5:50分 |
No.1:MC36問 No.2:MC36問 No.3:TBS2問 No.4:TBS3問 No.5:TBS3問 |
BAR(選択科目) | No.1:40分 No.2:40分 No.3:45分 休憩:15分 No.4:70分 No.5:45分 |
No.1:MC25問 No.2:MC25問 No.3:TBS2問 No.4:TBS3問 No.5:TBS2問 |
ISC(選択科目) | No.1:60分 No.2:60分 No.3:20分 休憩:15分 No.4:60分 No.5:40分 |
No.1:MC41問 No.2:MC41問 No.3:TBS1問 No.4:TBS3問 No.5:TBS2問 |
TCP(選択科目) | No.1:50分 No.2:50分 No.3:40分 休憩:15分 No.4:50分 No.5:50分 |
No.1:MC34問 No.2:MC34問 No.3:TBS2問 No.4:TBS3問 No.5:TBS2問 |
USCPA試験は、テストレット1~5のMC(Multiple choice questions:4択問題)・TBS(Task-based simulations:ケーススタディ問題)を4時間以内に解く試験です。
BARの時間配分・解答時間目安
BARの時間配分と1問あたりの目安解答時間は以下のとおりです。
No.1:40分/MC25問=約96秒/1問
No.2:40分/MC25問=約96秒/1問
No.3:45分/TBS 2問=約23分/1問
休憩:15分
No.4:70分/TBS 3問=約23分/1問
No.5:45分/TBS 2問=約23分/1問
BARのMCは25問とFAR並みに少ないので、比較的早く終わると思います。
傾向としてはFARと似ていますが、財務会計の上級の論点も出題されることから、あまり考えている時間が長すぎるとTBSを解くための時間が減って焦る可能性もあります。
USCPA試験全体の傾向として、後半のTBSにかけてバテる試験でもあるので、特にテストレット4・5あたりの解答時間に余裕をもたせておくことが重要だと思います。
リサーチ問題
テストレット3~5のTBS8問の中から1問(ごく稀に2問)、リサーチ問題と呼ばれる形式で出題されます。
例えば、「法人のLong term capital gainに関する情報はどこを参照すればいいか」といったお題が出され、コンピューター上の辞書システムを使って正しい参照場所を解答する、といった形式になります。
慣れれば時間の短縮になりますし、他のTBSを解く時間に回せるので、本試験では時間をかけすぎないのが得策です。
難易度変化
本試験において最も大きな特徴が難易度変化です。
日本の会計士や税理士試験とは違い、CBT(Computer Based Testing)というコンピューター形式での出題がされます。
先ほどのサンプルテスト問題をみて「想像より簡単だな」と思った方も多いかもしれません。
しかし、先ほどのサンプルテストは「中程度」部類に属すると思われます。
最初に受けたテストレットの結果によって、その後のテストレットの難易度が変化するのです。
難易度変化の概要は以下のとおりです。
- テストレット1のMCはすべて「medium(難易度中程度)」レベルからスタートする
- テストレット2のMCは受験者のパフォーマンスが良くない場合「medium(難易度:普通)」、良かった場合「difficult(難易度:難しい)」に切り替わる
- テストレット1・2の採点方法は、すべての問題の難易度をふまえて公平に採点される
- テストレット3以降のTBS・WCは、テストレット1・2のパフォーマンスの影響は受けず、難易度変化することはない
ダミー問題
MC・TBSの一部の問題については、採点対象外のダミー問題が含まれています。
ダミー問題の概要は以下のとおりです。
- 問題にはOperational Questions(普通の問題)とPretest Questions(ダミー問題)の2種類が含まれる
- Pretest Questions(ダミー問題)は採点対象外である
例えば、
- 新しい傾向の問題
- 問題文が長すぎて時間がかかる問題
- 異常に難しい問題
といった問題については、ダミー問題の可能性があります。
だからといってダミー問題と決めつけて未回答のまま次のテストレットに進むのはあまり得策ではないので、難しくとも可能な限り解答欄を埋めることを強くおすすめします。
まとめ:MC・TBSをバランスよく学習すれば必ず合格する
以上、BARの特徴についてご紹介しました。
BARの試験範囲は広く浅く学習する必要があり、各学習分野にあまり関連性がないのが特徴です。
- 各分野ごとにMC・TBSをしっかり回す
- テキストを適宜見直して、論点を整理する
- リリース問題や模試を受ける
といった順番で学習を進めることで、必ず結果がついてくる科目です。
他の科目については、以下の別記事でご紹介しています。
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