- 日本の公認会計士試験の浪人の実態について知りたい。
- 浪人を続けているがこの先が不安。もし受からなかったら、自分のキャリアプランをどう描いていけばいいかわからない...。
このようなお悩みにお答えします。
受験浪人の割合が非常に多い会計士試験。
私自身も一度は社会に出たものの、受験浪人をしようか悩みに悩みましたが、社会人受験生として日本の公認会計士試験に挑んで撤退した経験があります。
なので「会計士試験は浪人して合格するものだよね」という世間のイメージは大体合っていると思うくらい難易度の試験だと感じています。
早々に撤退してしまった私ですが、USCPAに照準を切り替えてBig4監査法人へアシスタントとして転職し、USCPA試験になんとか合格した経緯があります。
今回はそんなJCPAの撤退&USCPAの合格という経歴を持つ私が、公認会計士試験の浪人の末路について徹底的に解説してみました。
それでは順番に解説してまいります!
会計士試験の浪人期間はどのくらい?
まずは金融庁が2009年(平成21年)に公認会計士試験合格者を対象に行った、会計士試験に合格するまでの期間に関するアンケート結果を見てみます。
以下のアンケート結果によれば、
- 短答試験の合格までにかかった平均期間:2.3年
- 短答合格後、論文試験の合格までにかかった平均期間:0.9年
合計:3.2年
とのことです。
金融庁「合格者アンケート調査結果」より
これを経歴別に分解してみてみると、
- 一番短い勉強期間:在学中の方(1.9年+0.4年=2.3年)
- 一番長い勉強期間:監査法人・会計事務所の勤務者(2.8年+2.2年=5年)
といった調査結果でした。
金融庁「合格者アンケート調査結果」より
上記データから、平均して2〜3年を一旦の公認会計士試験の浪人期間の区切りと考えても良いかもしれません。
ただし注意したいのは、「合格までの平均2〜3年」という期間はあくまで勉強に専念した場合の数字です。
浪人の定義にもよりますが、働きながら合格を目指すとなった場合は3〜5年程度は見込んだ方が良いと考えられます。
もちろん国家三大資格である会計士試験の難易度は非常に高いですが、諦めずに続ける意思があれば合格できる可能性は高まると思います。
「まずはこの程度の期間、自分は心が折れずに勉強が続けられるか?」というように自省してみてもいいかもしれません。
公認会計士試験浪人の末路&年齢別パターン3選
続けて、公認会計士試験浪人の末路を年齢別に3パターンで解説していきます。
ちなみに最初に結論をお伝えすると、いずれのパターンにしても「心が折れていない限り試験勉強を続けてチャレンジすべき」というのが私の考えです。
①大学卒業〜25歳前後の浪人の場合
まずは大学卒業〜25歳前後の浪人の場合です。
これらの年代に該当する方は、よほど経済的に苦しいといった他の事情がない限り続けてみるべきだと考えています。
20代なんてまだまだ若いです。
体力・エネルギー・やる気のあるうちに、時々サボってもいいから挑戦し続けるべきです。
私自身は20代後半になって会計士試験から撤退したのですが、もちろん今でも日本の公認会計士という資格はかっこよくて魅力的だと考えています。
一方で、勉強を1年以上続けてみて短答試験に落ち、自分自身の性格と向き合ってみました。
そこでの自分との対話で見えてきた、
- JCPAに対してこだわりを持っていない
- なるべく自分にプレッシャーをかけすぎたくない
- 知名度がそれほど大きくなくともコスパがよく将来性のある資格勉強をしたい
といった理由から、私はUSCPAに切り替えることにしました。
ただ、もしUSCPAという選択肢がなかったら私もJCPAの勉強を続けていたかもしれません。
「20代を勉強ばかりで過ごして、社会人としての経験がなくて不安」という方の気持ちも理解できます。
ただ、個人的には「JCPA合格で得られる社会人経験とJCPAに合格していない状態で得られる社会人経験と、自分はどちらを重視するのか?」という視点で考えてみてもいいと思います。
USCPAに切り替えた身としては偉そうなことは言えないのですが、もし自分の中で「会計士としてキラキラ輝いている自分」のような理想像が消えない限りは、目指し続ける価値はあるのではないでしょうか。
②アラサー(30歳前後)の場合
次にアラサー(30歳前後)の場合です。
アラサー浪人については「余力があるならぜひ続けるべき」と考えています。
以下の金融庁アンケートによれば、27~33歳での合格者は約500名となっています。
金融庁「合格者アンケート調査結果」より
この数字を多いととるか短いととるかは個人の判断だと思いますが、私個人としては500人というのは非常に勇気づけられる数字で、アラサーはまだまだ合格チャンスに溢れている年齢層だと考えています。
さらに私もBig4監査法人に転職してみてからわかったことなのですが、監査法人には想像していたよりも多くの日米会計士受験生がいます。
もちろん資格を取得する気はなく、これまでの経験を活かしてバリバリ働く方もいれば、合格を狙って勉強・仕事をしっかり両立させている方もいます。
なんならアシスタントとして働きながら隠れ受験生を貫いている方もいるかもしれないほどです。
つまり、専念組でもそうでなくても、30代で会計士試験にチャレンジしている方はたくさんいるのです。(USCPAだって余裕でアラサー、アラフォー受験生がいます)
まだ社会に出ていない浪人の方からすれば孤独感を感じやすいかもしれませんが、働いている30代の方でもコツコツと勉強を続けている方が多いので「自分はアラサーなのにまだ勉強していていいのだろうか...」と悲観する必要はないです。
どうせ合格すればいくらでも就職して実務経験を積めますし、むしろ勉強時間を捻出できるのであれば集中して勉強すべきだと思います。
アラサーの方は年齢で焦りを感じる必要はないので、モチベーションを保って淡々と勉強に専念する強い精神力を保つのがベストではないでしょうか。
③アラフォー(40歳前後)の場合
最後にアラフォー(40歳前後)の場合です。
アラフォー浪人についても、働きながらでも続ける意思があるかぎり続けるべきだと思います。
私がBig4監査法人で知り合った方では2名ほど、アラフォーで合格・入所された方と仕事をご一緒する機会がありました。
そのうち1名については30代中盤から勉強を開始して3〜4年で合格した方でした。
そしてもう1名は、なんと20代中盤から仕事を3〜4社転々としながら40歳を過ぎて合格されたとのことでした。
この方は30代に差し掛かって断続的にライフイベントが重なったことで、勉強できない期間がしばしばあったにもかかわらず、40歳を過ぎるまでチャレンジし続けて見事合格された方です。(勉強への姿勢は本当に頭が下がります...)
監査法人の前にいろんな業界を渡り歩いてきたお二方とも人生経験が豊富な方ですし、尊敬する点が非常に多いと感じます。
ただ、職歴が一切ないままアラフォーで合格した方には出会ったことはないのですが、きっと世の中にはそういった合格者も存在すると思います。(実際、先ほどのアンケート調査結果の中には数名程度アラフォーの千年組合格者がいました)
先ほどの金融庁アンケートからの抜粋ですが、40歳以上での合格者は30名以上いるという事実がありますし、今でもおおむねこのような割合ではないかと推測しています。
金融庁「合格者アンケート調査結果」より
「浪人」をどのように定義するかによりますが、アラフォーだとしてもまだまだその先の人生は長いはずです。
100歳まで生きると考えれば人生の半分も過ぎてないわけですから、目指し続ける価値はあるのではないでしょうか。
私が考える浪人後のおすすめキャリアプラン3選
ここからは、もし浪人をしてやむなく断念をするとなった場合のキャリアプランについて考えていきます。
JCPAからUSCPAに切り替えた私が考えた、浪人向けのおすすめプランは以下3点です。
①短答合格者orアシスタントとして監査法人に入所&引き続きJCPA合格を目指す
まずは「アシスタントor短答合格者として監査法人に入所&引き続きJCPA合格を目指す」というパターンです。
実はBig4監査法人には毎年、そこそこの割合で「短答式試験に合格したものの論文に落ちた」という方が入所されています。
そのような方は基本的に残業はなく、論文試験に向けた試験休暇も優先的に取得できる環境が整っているので事業会社などよりは安心して試験に挑戦できる環境が整っています。
またBig4監査法人によっては、短答試験に合格していなくとも働きながら合格を目指せる「監査トレーニー制度」を設けている法人もありますので、検討してみる価値はあります(監査トレーニーは以下記事で解説しています)
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さらにはアシスタントとしてBig4監査法人に転職して、監査業務に慣れながらJCPAの合格を目指している方もいらっしゃいます。
なので、今のあなたが短答合格前でも後であっても、Big4監査法人に入所してJCPAの合格できる可能性は高いです。(もっとも先ほどのアンケート調査結果のとおり、働きながらだと3〜5年は覚悟する必要があると思います)
- 「まだ就職したことがなく不安」
- 「前職を退職してからブランクが空いてしまった」
といった不安をお持ちの方は、会計・税務人材に特化したヒュープロのキャリアコンサルタントに聞いてみるのがおすすめです。
ヒュープロ:Big4への転職や会計・税務業界の最新の転職トレンドを知りたい方向け
②USCPA試験に切替&監査・会計コンサル経験を積みながら合格を目指す
次に「USCPA試験に切替&監査・会計コンサル経験を積みながら合格を目指す」というパターン。
私自身がまさにこのパターンで入所して、転職後にUSCPAに全科目合格することができました。
はっきり申し上げて、USCPAは会計系資格にとどまらず全資格の中でもトップレベルでコスパが良いと考えています。
もしあなたが今の時点で
- 簿記3級レベル以上の会計スキル
- TOEIC700以上の英語スキル
が備わっているようであれば、1.5〜2年&150万円程度の時間的・金銭的コストをかけることでUSCPAに合格できる可能性が高いです。
USCPA試験に関する勉強期間・費用は以下記事で解説しています。
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一方でたしかに「USCPAは独立できない・意味がない」とネガティブに考える方も一定数存在します。(USCPAのコスパや「意味がない」という論調については以下記事で解説しています)
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しかし個人的には、そのような目先のデメリットではなく、将来的な自分の付加価値をもっとしっかり吟味すべきだと思います。
特に今後は欧米・アジア諸国との競争が激化しており、日本国内だけで完結するビジネスはどんどん少なくなっていくと想像しています。
となると、将来的なビジネスのニーズに備えられるよう、今のうちに英語・会計スキルの証明となるUSCPAを取得しておくことは非常に大きな価値があると思います。
私自身、アシスタントとしてBig4監査法人へ転職してUSCPAに合格しましたが、会計の実務経験を積めていることに非常に満足していますし、会計のプロとしてのキャリアを歩み始めたことに納得しています。
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少なくとも人生は好転したと思いますし、英語と会計に重度のアレルギーがない方であれば、どなたでもUSCPAの取得を検討してみる価値はあると思います。
USCPA試験業界には「アビタス」をはじめ資格取得のサポート体制が万全な予備校が複数あります。
なのでUSCPAがちょっとでも気になった方は、以下からお気軽にパンフレットや相談会の情報をチェックしてみてください。
おすすめのUSCPA予備校
アビタス:合格者実績No.1。日本語テキスト&厳選問題で演習したい方向け
③税理士試験に切替&税務・コンサル経験を積みながらじっくり科目合格を目指す
日本における会計系資格としては公認会計士と並んで最難関と言われる税理士試験に切り替える方法もあります。
USCPAと税理士を比較した記事を書いていますが、勉強時間・難易度ともに税理士はかなりハードルが高い印象です。
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しかし、USCPAと違って税理士は科目合格さえすれば生涯有効となるため(USCPAの科目合格有効期間は18ヶ月)、コツコツと合格を積み重ねていく方に向いていると思います。
さらには
- 会計系科目:1科目(簿記論、財務諸表論のいずれか1科目)
- 税法科目:1科目
合計:2科目
にさえ合格すれば、アカスク(会計大学院)に行くことで残り3科目の免除を受けられる可能性が非常に高くなります。(在学中に執筆した学術論文を公的機関に認められる必要があるため、ある程度の労力は要します)
なので、「なるべくフルで税理士試験の5科目を受験したくない」という方は、アカスクに行くのも有効だと考えられます。
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以上のように考えれば、実質2科目を勉強しながら、会計・税務での実務経験を積んでいく方法は選択肢としてありではないでしょうか。
まとめ:「やめとけ」「無理ゲー」という他人の意見は不要。個人的にはできる限り続けるべき
以上のとおり、公認会計士試験の浪人の末路について解説してみました。
年齢別でのポイントをまとめると以下のとおりです。
- 大学卒業後〜20代中盤の浪人:続けるべき
- アラサー浪人:余裕があれば続けるべき
- アラフォー浪人:働きながらでも続ける意思があるかぎり続けるべき
また浪人をやめるとした場合のキャリアプランは以下のとおりです。
- アシスタントor短答合格者として監査法人に入所&引き続きJCPA合格を目指す
- USCPA試験に切替&監査・会計コンサル経験を積みながら合格を目指す
- 税理士試験に切替&税務・コンサル経験を積みながらじっくり科目合格を目指す
私がUSCPAを受験している期間もそうでしたが、SNSなどでは「やめとけ」といった心無い言葉を見つけてしまう(あるいは自ら検索してしまう...)ことでモチベーションが下がることが何度もありました。
しかし合格した今振り返れば、年齢を重ねても難関資格は胸を張って「合格してよかった!」と言える資格なのだと実感しています。
ぜひ浪人しようか悩んでいる方、浪人を撤退しようか悩んでいる方は、自分と丁寧に向き合って、今後の人生計画を考えられてはいかがでしょうか。
なお公認会計士試験からの撤退については以下の別記事でも解説していますので、併せてご覧ください。
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