- USCPAの試験内容について知りたい
- 各4科目の特徴について知りたい
このようなお悩みにお答えします。
Big4監査法人へアシスタントとして転職後、アビタスで勉強しながらUSCPA試験に合格した私が、USCPA試験の試験内容について徹底的に解説してみました。
今回の記事を読めば、USCPA試験の内容の概要だけでなく、それぞれの特徴からどんな対策を立てればよいのかについて理解を深めることができると思います。
それでは順番に解説してまいります!
USCPA(米国公認会計士)の試験内容
USCPA(米国公認会計士)の試験内容は以下4科目です。
- FAR (Financial Accounting and Reporting):USCPA試験の登竜門。4科目でもっとも勉強時間が必要。
- AUD (Auditing and Attestation):読解力や監査手続の理解力が求められる。FARに次いで合格率が低い。
- BEC (Business Environment and Concepts):学習分野が独立して分かれている。ライティングが鬼門。
- REG (Regulation):アメリカの税法に慣れない日本人にはやや難しい。税法の背景知識やビジネス法の暗記が必要。
日本の公認会計士試験(短答式)と比較すると、それぞれ関係性の高い科目は以下のとおりです。(必ずしも試験範囲は日米会計士試験で一致しないのでご留意ください)
- FAR (Financial Accounting and Reporting)⇒財務会計論
- AUD (Auditing and Attestation)⇒監査論
- BEC (Business Environment and Concepts)⇒管理会計論・経営学(選択科目)・経済学(選択科目)
- REG (Regulation)⇒租税法・企業法
とはいえ、日本の公認会計士試験のほうが圧倒的に範囲も広く深い理解が求められるため、難易度としてはJCPA>USCPAとなると考えています。
それぞれの科目について深掘りしていきます。
①FAR (Financial Accounting and Reporting)
まずはUSCPA試験の登竜門とも言えるFARです。
FARの学習範囲と配点
FARの学習範囲と配点は以下のとおりです。
- 財務会計:80%
- 公会計:20%
FARは4科目の中でも、もっとも勉強時間が必要となる科目です。
私の場合、受験資格を得てから1科目めとして勉強をスタート以降、合格するまでに約500時間かかりました。
FARの特徴①すべての科目の基礎となる
FARの最大の特徴が、4科目の中でもっともボリュームが大きいだけに、すべての科目の基礎となる点です。
たとえばAUDでは、後発事象がFARと重複したり、内部統制の学習でも仕訳のイメージができると進めやすいです。
BECでは、FARで学習したPLやBSの勘定科目を、BECの財務分析でも活かすことができます。
REGでも、FARで学習する税効果会計が密接に関連するので、FARで税効果をマスターしておけばREGの勉強がラクになります。
FARの特徴②財務諸表のつながりの理解が問われる
FARのなかでも大半を占める財務会計については、PLやBSといった財務諸表のつながりを理解していることが重要です。
たとえば以下のように、各財務諸表は密接なつながりがあります。
- PL(損益計算書:Income Statement(IS)ともいいます)において、営業成績や当期純損益を把握する
- SS(株主資本等変動計算書)において、PLで算出した当期純損益や前期BSのデータを活用して期末の純資産を把握する
- BS(貸借対照表)において、PLやSSと照らし、資産・負債・純資産の財務状況を把握する
- CF(キャッシュフロー計算書)において、PLやBSと照らし、営業・投資・財務活動によるキャッシュの増減を把握する
- CI(包括利益計算書)において、SSやBSと照らし、資本以外の純資産についてより細かな内訳を把握する
このように、それぞれの財務諸表の特徴を理解したうえで、財務会計の勉強を進めると非常にスムーズです。
FARの特徴③財務会計は簿記2級レベル
財務会計のもうひとつの特徴としては、MC(四択問題)・TBS(総合問題)ともにがっつり出題される傾向にあります。
日商簿記2級とかなり範囲が重複している印象なので、個人的には簿記2級(最低でも簿記3級)まで取得したうえでUSCPAの勉強に取り掛かるのがおすすめです。
FARでは、たとえば簿記でやるような「商品/現金」「現金/借入金」といった仕訳が登場します。
日本語で既に勘定科目が頭に入っており、仕訳をパッとイメージできるようであれば、英語に多少の苦手意識があってもFARは進めやすいと思います。
実際、FARの勉強を始めたあとになって「基本知識が日本語で入っていなくて進められない」という理由で簿記をやりなおす方もいます。
私はUSCPA勉強前に簿記2級を持っていましたが、やはり事前知識がなければもう少し時間がかかっていただろうなと思っています。
USCPAは科目失効制度のあるスケジュールがタイトな試験なので、USCPAの勉強前に簿記の基礎知識を身に付けるのがのぞましいです。
FARの特徴④公会計は理解はほどほどに暗記重視
一方、公会計は初めて学習する方がほとんどかもしれませんが、実際に進めてみると範囲はそこまで広くなく、しっかり暗記することで効率的に点数を稼げます。
主に政府会計やNPO会計など公的機関における会計基準についての理解を問われます。
日本の公認会計士試験でも学習しない分野なので学習当初は戸惑う方が非常に多いですが、学習に慣れてくればそこまで恐れるものではないです。
計算よりも理論が重視される科目なので、暗記が得意な方には向いている分野だと思います。
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②AUD (Auditing and Attestation)
次にAUDです。
AUDの学習範囲と配点
AUDの学習範囲と配点は以下のとおりです。
- 監査業務&証明業務(各業務で準拠すべき基準や手続きの違い):80%
- 倫理(特に独立性):20%
AUDのボリュームは少ないですが、FARに次いで合格率が低い科目です。
私の周りやTwitterでは「AUD沼にはまって受験勉強から抜け出せない…」という方をしばしば見かけるので、かなり要注意な科目だと思います。
私の場合は合格するまでに約300時間かかり、1回目74でギリギリ不合格、2回目75でギリギリ合格を経験しています。
AUDでは高い精度で問題文を読んで、微妙な選択肢を丁寧にふるいにかけていくような戦略が求められます。
AUDの特徴①監査手続(内部統制&実証手続)が最重要
AUDの大きな特徴が、監査手続に関する全体の流れの深い理解が求められる点です。
特に内部統制と実証手続については、MCはもちろんTBSでは必須ともいえる分量が出題されます。(むしろTBSの大半は内部統制・実証手続だと思います)
問題演習をサクサクこなすというよりも、監査手続全体の流れの理解が非常に重視される学習領域なので、下手に理解しないまま臨むと私のようにギリギリ不合格といった現象が起きます。
アサーションや「ここでこうする」といった項目をただ暗記するのではなく、
- なにが経営者や従業員の不正につながるのか?
- なぜこの社内手続が企業の不正防止につながるのか?
- なぜこの監査手続が会計士の不正発見につながるのか?
といった視点で、1つ1つの手続きを自分の中でイメージしながら勉強を進める必要があります。
これができずにAUDの沼にはまっている方が多い印象ですので、ぜひ勉強前にご留意いただきたいと思っています。
AUDの特徴②レポート(監査・レビュー・調製・検証・合意手続・経営者確認書)の暗記も必要
監査業務・証明業務(配点比率80%)の分野でもうひとつ重要なのがレポートの暗記です。
公認会計士は
- 監査
- レビュー
- 調製
- 検証
- 合意手続
- 経営者確認書
といった監査や証明業務に関する多くのレポート(報告書)を作成します。
それぞれのレポートに記載される内容や順番が微妙に異なるので、これもある程度の理解と暗記が求められます。
AUDの特徴③倫理(特に独立性)も丁寧に暗記
倫理(配点比率20%)についても暗記が求められる項目です。
特に、会計士が業務を進めるうえで超重要な概念である、企業との癒着を防ぐための「独立性」がポイントとなります。
AUDの試験では
- 監査業務以外で、監査クライアントへの提供がOKな業務&NGな業務(すでに税務コンサル業務を提供している場合など)
- 逆に、受けていい監査業務&ダメな監査業務(監査法人OBがクライアントにいる場合など)
といった線引きを、ひとつひとつの状況ごとに覚えていく必要があります。
独立性についてはBig4監査法人に入所したあとも定期的に厳しくチェックされるので、まさに勉強したことが監査法人の転職後にも活かせる分野といえます。
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③BEC (Business Environment and Concepts)
次にBECです。
BECの学習範囲と配点
BECの学習範囲と配点は以下のとおりです。
- 管理会計・ファイナンス:36%
- コーポレートガバナンス・COSO:22%
- 経済学:22%
- IT:20%
私の場合、合格するまでに約250時間かかりましたが、受験生によってはもう少し時間がかかると考えています。
BECの特徴①各分野が独立しており関連性がない
BECの大きな特徴が、それぞれの学習領域が独立しており、関連性がない点です。
たとえば、TBS(総合問題)の中でファイナンスに関する出題があった場合、経済学の知識を問う問題は出されません。
すなわち、各分野ごとに集中的に学習すれば合格レベルに近づけることができます。
BECの特徴②ライティングが鬼門
またBECの出題形式・比率は他3科目と大きく異なり、WC(ライティング)の問題が出題されます。
- MC:50%
- TBS:35%
- WC:15%
日本人受験生にとっては苦手な方も多いのがWCです。
さらに実際に勉強を進めてみるとわかるのですが、WCについては、他の科目でMC・TBSの対策に慣れてしまっているためおろそかになってしまう傾向にあります。
なので、テキストを読みつつMC・TBSを2~3周回した段階で、WCの対策に早めに取り掛かるようにするのがいいです。
BECの特徴③管理会計・ファイナンスは計算力が問われる
管理会計・ファイナンスは背景知識だけでなく、一定の計算力が求められます。
特にファイナンスは理論だけでなく時間価値などのやや難度の高い計算が求められるので、慣れていない方は少し時間がかかるかもしれません。
とはいえ、各予備校のテキストを丁寧に読んで何度も問題演習をこなせばできるようになるので、恐れる必要はないと思います。
BECの特徴④コーポレートガバナンス・経済学・COSO・ITは暗記重視
コーポレートガバナンス・経済学・COSO・ITといった分野は暗記が重視されると考えています。
もちろん、各分野の背景知識は必要ですが、それぞれについてそこまで深い知識が問われるものではありません。
基本的な知識を身に付けたうえで暗記&ライティング対策にキーワードについて英語で説明できるようにする、といった進め方が有効です。
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④REG (Regulation)
最後にREGです。
REGの学習範囲と配点
REGの学習範囲と配点は以下のとおりです。
- 税法(米国内の個人・法人の税制):85%
- ビジネス法(民法・商法):15%
日本の会計士試験でいう租税法と企業法の一部が合わさったようなイメージです。
しかし、日本でいう会社法や金融商品取引法については出題範囲外となっています。
また、私がREGに合格するまでにかかった勉強時間は約400時間です
REGの特徴①税法は理解重視
REGは法制度を学ぶ科目である以上、理解重視で進める必要があります。
税法を理解するうえで、アメリカという国の背景を想像しながら学習するといいです。
たとえばアメリカには
- 寄付文化が根付いている
- 移民が多様である
といった背景があり、寄付金控除やマイノリティの方に対する優遇制度が整っています。
あるいは頻出論点として、「Capital Assets(資本資産)の保有期間が1年を超えるか否かで税率が変わる」といったものがあります。
- 保有期間1年以上の場合:Long term capital gain/loss(長期資本損益)となり税率が下がる(優遇措置がある)
- 保有期間1年以内の場合:Short term capital gain/loss(短期資本損益)となり税率はOrdinary Income(通常所得)と変わらない
長期資本損益にはなぜこのような優遇措置があるかと言えば、国側からすれば「国の経済成長を促すため、お金を株式や不動産といったものに投資&長期保有してほしい」という背景があるためです。
このように、「この制度はどのような背景があって優遇措置が認められているのか?」をイメージしながら覚えると理解しやすいです。
REGの特徴②税法の個人・法人・パートナーシップの理解と暗記は最優先
さらに、税法で学習する
Indivisual(個人の所得):adjusted gross income / standard deduction or itemized deductions / tax credit の各数値
Shareholders・C corporation・S corporation・Partnership(株主・法人・パートナーシップの所得):各Basisの計算方法の比較
といった論点を学習するには、深い理解と丁寧な暗記が必須です。
Indivisual についての税務申告フローは分かりやすいので、まだ暗記でカバーできる部分が多いです。
しかし、Shareholders(株主)・Ccorp,Scorp(法人)・Partnershipの論点は、Basisの高いレベルでの理解なしに突破することはほぼ不可能です。
USCPA界隈でよく言われる言葉ですが、「Basisを制する者はREGを制す」は真実です。
Basisについては、MCでもTBSでも驚くほど出題されますので、ここにREGの勉強時間の半分を費やしてもいいくらいです。
REGの特徴③Book/Tax調整もMCでもそこそこ出る。TBSではほぼ必須
また、税法で重要な論点のひとつに、FARで学習した税効果会計(DTA,DTL,DTE)に関連するBook⇔Tax間の調整があります。
これは、会計基準に則って計算したPL, BSの損益を、税法に基づいて税務申告するのに必要な「損金・益金」を再計算する手続きです。
MCでも出題の可能性が高く、TBSではほぼ毎回といってもいいほどの頻度で出題されます。
税効果会計を忘れてしまった場合は、一度FARのテキストに立ち返って復習するのもおすすめです。
むしろ、私はREGの問題演習をやり始めたばかりのころは、演習のたびに税効果忘れていたため、最終的にFARの内容をREGのテキストに書き込んでいました...。
FARの税効果とREGの税金計算は比較して覚えるのが非常に重要なので、比較表のようなものを自分なりにアレンジして作成すると理解が早まります。
以上から、Book/Tax調整もマスターしておくことを強く推奨します。
REGの特徴④ビジネス法は「リリース問題を解きまくる→テキストに戻る」の繰り返し
ビジネス法に関しては
- 契約
- 代理
- 財産
- 株式
- 不法行為
といった個別論点を学習します。
なじみのない英単語もしばしば登場しますが、これも暗記がモノを言う分野です。
ただ、アビタスのテキストをすべて学習するのは非効率なので、時間のない方は「ある程度リリース問題で問題を解いてから、テキストに戻る」という戦略がおすすめです。
もちろんすべてを網羅的に学習しておくに越したことはないので(MCの20%はビジネス法からの出題のため)、最初から丁寧に講義を聞いてMCを解くのもアリです。
しかし、TBSの練習問題はあまり解く必要はないと感じました。
なので、ビジネス法についてはMC・リリース問題をベースに進め、不明点があればテキストに戻るという方法が効率的です。
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まとめ:4科目突破には戦略が必要
以上のとおり、USCPAの4科目は、それぞれ特徴も個性的ながら非常に学習範囲の広い科目です。
またUSCPA試験自体、ダミー問題が出題されたり時間配分も科目によって異なるなど戦略が必要な試験です。
USCPAの勉強を始めるからにはしっかり短期間(私の場合は16ヶ月でした)でのやり抜く力が求められますが、働きながら合格を目指せる希少価値の極めて高い資格だと思います。
タフではあるものの、勉強と仕事をコツコツと両立させることで得られる希少性の高い資格はUSCPAだけではないかと思いますので、ぜひ一人でもUSCPA試験に挑戦される方が増えれば嬉しいです。
もしUSCPA試験の勉強で悩んでいる方は、以下の記事でUSCPAの合格までにやるべきことをまとめていますので是非ご覧ください。
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